2021年03月01日

新刊!電子書籍■漆黒の異邦人・火蜥蜴(サラマンドラ)の谷

 電子書籍の新刊を刊行いたしました。

漆黒の異邦人・火蜥蜴(サラマンドラ)の谷〔異世界ファンタジー小説・ライトノヴェル〕結城あや

 ・内容紹介
「漆黒の異邦人」は3部構成で構想しており、第1部はこの世界で主人公あやが目覚め、ムンドゥス王国の騎士となり、さらに自身の身に封印された魔族の魂の力によって超人的な力を発揮していきます。そして魔族の侵攻によってムンドゥス王国が崩壊するまでが描かれます。
 第2部は単独の魔族ハンター=賞金稼ぎとなったあやの物語で、短編連作的な構成となっています。ムンドゥス王国の崩壊にあやが関わったとして、騎士時代に姉のように慕っていた騎士団長フォルティから賞金首として指名手配もされています。
 本作はその第2部のエピソードのひとつになります。
 第3部についてはさらに壮大な展開を構想していますのでお楽しみに。

※本文より
「『火蜥蜴の谷』に行くのかい」
 草原を貫く一本道で行き会った荷馬車に乗った農民の老人が言った。日に焼けた肌に深く刻まれた皺の一本一本がこれまで生きてきた日々をまるで年輪のように感じさせる。
 西の空は夕焼けで燃えるように紅く、馬車の影も長い。その横を同じペースで進んでいるのは白馬に乗った女性騎士だ。黒色の甲冑に身を包んでいるが兜を着けていないのでその顔ははっきりと見ることができた。甲冑同様に黒い肌、灰色の瞳、銀色の髪。それだけでこの女性騎士が「ムンドゥスのアヤ」と呼ばれた騎士団の中でも特出した騎士だったことを知る者も多い。
「あそこは火山が近くてな。谷は地熱も高いし有毒なガスも出ているから滅多に人は近づかんよ。ただ周りに温泉のわき出ている場所がいくつかあって、そっちは宿屋もあるしいろいろな地方から人が集まってくる。まあ中には火蜥蜴を捕まえてひと儲けしようなんてことを考える連中もいるようだがね」
「火蜥蜴は本当にいるんですか?」
「さあどうだか…。昔はいたのかもしれないし、いまもいるのかもしれない。火蜥蜴の皮だとか爪だとかも売ってるって話しだしな。誰かが捕ってくるんだろうよ」
「噂では最近そのあたりに魔族が出たとか」
「ああ、ああ、わしも聞いたよ。ザンヴォラーのことだろう? ありゃあ、火蜥蜴だよ。たぶん魔族が火蜥蜴の身体に憑依したんだろうなあ」
「ザンヴォラー…」
「おそろしいやつさ。小山のようにでかいんだ。普通の火蜥蜴は大きくても3メルカ程度なんだかね。しかもザンヴォラーは睨むだけで火をおこす。もしザンヴォラーに出くわしたら目を合わせちゃいかんぞ。そのときは自分の身体が燃え上がるときだ」
「おじいさん、ずいぶん詳しいのね」
「あっはは。ザンヴォラーは大昔にも出たことがあるんだよ。わしも、わしのじいさんにこの話を聞いたのさ」
「その、昔に出たザンヴォラーはどうやって退治したの?」
「退治することはできなかったんじゃないのかな。どうやって始末したのかは聞いてないからなあ。ただ、それより昔、何百年も前の話らしいが、そのときは銀色の巨人の勇者が退治したって話だ」
「巨人の勇者…それはもう神話の世界ね」
「そうさ、それくらい昔からいるんだよ、ザンヴォラーは。やつが出たってことは火蜥蜴も生き残ってたんだな」
「なるほど」
「あんた、まさかザンヴォラー退治に行こうとしてたのかい?」
「実はそうなの。魔族狩りを仕事にしてるので」
「魔族狩り?」そう言って老人は改めてアヤのほうに顔を向け目を見張った。「あんた、もしや『漆黒の異邦人』かい? 『ムンドゥスのアヤ』」
「そんな風に呼ばれてるみたいね」とアヤは微笑んだ。
「これは驚いた。あんたみたいなお嬢さんだったとはな。女だっていう話だったが魔族を倒すさまを聞くと本当は男なんじゃないかって疑ってたよ」
「そんなにすごい話になってるの?」
「そりゃあもう、魔族の腕を引きちぎったとか頭からまっぷたつに切り倒したとか。まあ噂なんてものは尾ひれがつくものだからなあ。実際はそんなこともなかったんだろうさ」
 アヤはクスクスと笑って老人の話を聞いていたが、これまで彼女が魔族を倒したときに話にあったようなことは実際に起きていた。華奢に見える少女だが、アヤの身体の中にも魔族の魂が取り込まれていてその力を使うとき相手の腕を引きちぎるくらいのことは簡単なことだった。またアヤの黒い肌、灰色の瞳、銀色の髪も魔族の力が発現した結果なのだ。
「噂通りに強かったとしてもザンヴォラーには気をつけなさいよ。やつは見ただけで相手を燃やしちまうんだから」
「ええ、気をつけるわ」
 草原の向こうに林が見えてくる。その手前に数軒の農家が建っているのも見えた。その方向に道が分かれて伸びている。老人の帰る場所だ。
「それじゃあ、ここでお別れだ。気をつけて行きなさい」
「ありがとう。さようなら」
・・・・・・・・・・

 お読みいただければ幸いです。
 よろしくお願いいたします。
新刊!電子書籍■漆黒の異邦人・火蜥蜴(サラマンドラ)の谷


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